低用量ピル(経口避妊薬)の服用による、基礎体温の変化や、生理痛との関係はどうなっているのでしょうか。
低用量ピル(経口避妊薬)の成分でもるエストロゲンのはたらきについても説明します。
ピル(低用量)と基礎体温
低用量ピル(経口避妊薬)を服用すると、基礎体温は高温相となります。
これは黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響です。
では、排卵期へ入り、黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌された時の基礎体温のはたらきを説明します。
卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響で各器官のはたらきを高め、粘膜に潤いが与えられた女性の体内は、次に排卵期へと入ります。
排卵がおこると基礎体温は上昇し、次に黄体期へ入ります。
基礎体温とは、飲食・運動・感情などの体温が変化する状況を避けて、起床時に寝たまま測る体温のことです。
黄体期では黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増え、基礎体温は引き続き高温が続きます。
黄体ホルモン(プロゲステロン)が徐々に減少し、基礎体温も比例して低温へとなっていき、黄体期が終わると、月経期へ突入します。
ここで月経は起きるのです。
この基礎体温が安定しなくなると、月経開始遅延に影響してしまいます。
基礎体温とは、体を動かしていない最も安静な状態の体温です。
この基礎体温を、毎日同じ時間帯に測定することで、月経の時期や排卵の有無、体の状態を把握することができます。
低用量ピル(経口避妊薬)の服用中は、基礎体温は高温相が続きます。
これは、低用量ピル(経口避妊薬)の成分に少量の黄体ホルモン(プロゲステロン)が含まれている為です。
そのため、低用量ピル(経口避妊薬)の服用中には、基礎体温の測定はあまり意味を成しません。
低用量ピル(経口避妊薬)の服薬中止後、最大6ヶ月で、基礎体温は元の高温期と低温期の2相へと戻ります。
卵胞ホルモンの主なはたらき
低用量ピル(経口避妊薬)の成分でもある卵胞ホルモン(エストロゲン)ですが、排卵期の前の卵胞期における卵胞ホルモン(エストロゲン)のはたらきをみてみましょう。
卵胞ホルモン(エストロゲン)は、排卵前の子宮内膜の増殖期に分泌量が増加します。
らせん動脈を増生させることで、子宮内膜機能層の増殖・肥厚を促して、受精卵が子宮に着床しやすい環境をつくります。
他にも妊娠に備えて、子宮、卵巣、乳房などの器官のはたらきを高め、膣や皮膚、膣以外の粘膜にも潤いを与えます。
分泌量がピークを迎えるのは20代で、以後分泌量は徐々に減少していきます。
引用:https://www.kounenki-life.net/
卵胞ホルモン(エストロゲン)が活発に分泌される間は、自律神経のバランスを整えることから、脳の血流が促進し、精神的にも身体的にも体調が良く、気分も落ち着いている時期です。
月経前症候群の原因の一つが、この卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)によるホルモンバランスの乱れと言われています。
ホルモンバランスが崩れると月経不順や不正出血の原因にもなります。
低用量ピル(経口避妊薬)は、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の合剤で、排卵抑制などによる避妊効果や、月経困難症・子宮内膜症の症状緩和薬として使用されています。
また、更年期障害の治療としてもホルモン補充療法として卵胞ホルモン(エストロゲン)は使用されています。
卵胞ホルモン(エストロゲン)は、体内で女性ホルモンとして作り出され、卵巣から分泌される成分ですので、外部から卵胞ホルモン(エストロゲン)そのものを摂取することはできませんが、卵胞ホルモン(エストロゲン)を正しく分泌させるためには、まず健康であることが基本です。
毎日の食事は栄養バランスの良いものを摂り入れ、健康な体を作るように心がけましょう。
特に、大豆イソフラボン、ビタミンE、ビタミンB6を含む食材には、不足した卵胞ホルモン(エストロゲン)を補ったり、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を促したりする働きがあるとされています。
卵胞ホルモン(エストロゲン)などの女性ホルモンをしっかりと分泌させるには、規則正しい生活を送ることが大切です。
特に睡眠不足になると、女性ホルモンの分泌が崩れてしまうので、睡眠不足は大敵です。
寝室の環境を整え、寝つきが良くなるようにストレッチで体を温める、就寝前のスマートフォンの使用は控えるなど、良質な睡眠がとれるように工夫をしましょう。
また、体の冷えはホルモンバランスの乱れにつながります。
特に冷え性の人は、腹巻や靴下を着用する、温かい飲み物を飲み体内から体を温める、41℃前後の温度の湯船に10~15分は浸かるようにするなど、冷え対策をすることも大切です。
引用:https://www.kobayashi.co.jp/
ピル(低用量)の子宮筋収縮の抑制作用
低用量ピル(経口避妊薬)には、子宮筋収縮を抑制するはたらきがあります。
この子宮筋収縮はなぜ起こるのかを説明します。
妊娠しなかった場合の体内では、月経として子宮内膜は剥がされて、血液とともに体外へ排出されます。
この排出を促す物質が、プロスタグランジン(PG)です。
プロスタグランジン(PG)とは、人間の精液や羊の精囊(せいのう)腺などから得られる生理活性物質で、約10種類に分かれており、それぞれが少ない量で体の様々な機能を調節する働きをします。
血圧低下作用や、体の痛みや熱を伝える発熱・痛覚伝達作用、出血を止めるための血液凝固作用などがあり、プロスタグランジン(PG)の種類によっては相反する作用をもっています。
しかし、プロスタグランジン(PG)は、陣痛促進剤にも使用されるほど子宮を収縮させる働きが強いため、過剰に分泌されると陣痛のような腹痛が起こってしまうこともあります。
また、プロスタグランジン(PG)は痛みを強める・血管収縮などの作用もあり、頭痛・肩こり・腰痛・胃痛・体の冷え・倦怠感・嘔気などの症状を引き起こす場合もあります。
月経時には下痢や頭痛などの全身症状を伴うケースも多くみられますが、これもプロスタグランジン(PG)が血液に乗って全身に作用してしまうために起こるのです。
これがいわゆる月経痛の症状です。
一般的には月経困難症と呼ばれています。
低用量ピル(経口避妊薬)には、プロスタグランジン(PG)を抑制する働きがあるため、月経困難症の症状を軽減してくれます。
さらに低用量ピル(経口避妊薬)は、子宮内膜を薄く保つ役割も果たします。
子宮内膜が薄いため、月経量が減少することで、さらに月経痛の軽減につながります。
身体的な原因(病気)が存在しないにも関わらず、月経痛の症状が強く出る場合を、機能性月経困難症と言います。
この機能性月経困難症の治療方法は、適度な運動・鎮痛剤の服用・低用量ピルの服用が一般的です。
反対に、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫・子宮の奇形など、疾患がもとで起きている月経困難症を、器質性月経困難症と言います。
この場合の治療方法は、その疾患の治療ということになります。
どちらの月経困難症なのかをはっきりさせておかなければ、子宮内膜症や子宮腺筋症を長期間放置してしまうことにもつながるため、非常に危険です。
ただの生理痛と勝手に認識せずに、きちんと一度専門医の診察を受けることをおすすめします。
引用:http://www.mochida.co.jp/